今回は、一人アカペラを歌うミュージシャン「よういんひょく」さんへのインタ
ビューです。YouTubeのトータル再生回数は250万回、イギリスのラジオやアメ
リカのテレビ番組にも取り上げられるなど今大注目のアーティストです。
YouTube大ヒットの裏には、練りに練った戦略が隠されていました。
(以下:よういんひょく→よう/弊社社員→社員)
社員:本日はよろしくお願いします。
よう:よろしくお願いします!
社員:自己紹介も兼ねまして、今の活動内容を教えてください。
よう:一言で言えば「YouTubeに一人アカペラの動画を上げてる韓国人」です。
社員:YouTubeのチャンネル登録者数は1万5000人を越え、再生回数もトータル
で250万回ありますよね。
よう:お陰さまで。ありがとうございます。
社員:アカペラを始めたきっかけは何なのでしょう。
よう:大学でアカペラサークルに入ったことがきっかけです。初めは合唱サークル
と掛け持ちをしていましたが、徐々にアカペラの魅力にハマり、気づけば一筋に
なっていました。
社員:その時から「一人アカペラ」も始めていたんですか。
よう:一人アカペラを始めたのは、その数年後ですね。僕は韓国人なので、大学を
休学して2年間軍隊に行っていたんです。終わって帰ったらすぐに就活だし、この
先どうすべきか色々考えましたね。
まだ若かったので、今が人生の岐路というか・・・就職するのか、音楽でやってい
くのか、その時に決めなければならないと思っていました。そんなことはないとあ
とになると分かりますが、そのときは、悩んだ末に音楽でやっていくことを決意し
ましたね。
そして、やるからには本気でやりたかったので、その時に目標を「グラミー賞受賞」
に決めました。まずはどの音楽で自分をアピールするかってことなんですが、アカ
ペラの経験を活かせる「一人アカペラ」を選んだんです。
社員:当時は、どのように活動していたのでしょうか。
よう:当時はまだYouTubeを使っていなくて、一人アカペラで作った曲をデモテー
プにしてCDで配ってましたね。
ミュージシャンにとってYouTubeは効率的なアイテム。
世界中にデモテープを配っているようなもの
社員:YouTubeを使い始めたきっかけは何だったのでしょう。
よう:効率的だと判断したからです。ネットワークが発達しているので、たった一つ
の投稿で世界中の人にデモテープを配っているようなものだなと。それから、当時外
国人がYouTubeにアップした一人アカペラの動画を見て、「俺の方が絶対うまくで
きる」と思ったのも理由のひとつです。
まだアカペラ動画自体多くなかったですし、イケるかもしれないと思ってましたね。
社員:結果はどうでしたか。
よう:お陰さまで良かったです。1曲目の投稿で、およそ60万回再生されたので自分
でも驚きました。
社員:どのようにバイラルが起こったのでしょうか。
よう:1曲目にアップしたマイケル・ジャクソンの『スリラー』に関しては、プロブ
ロガーのgoriさんがブログで紹介してくれて。そこからSNSを通して拡散されていき
ました。
Twitterでは「ASIAN KUNG-FU GENERATION」をはじめ、多くのミュージシャンも
リツイートしてくれたんです。彼らはフォロワーが多い、いわゆるインフルエンサーな
ので急速に広がっていきましたね。
Yahoo!ニュースの動画トピックスでもトップに掲載してもらったりして。本当にありが
たかったです。
社員:1曲目にしてその拡散力はすごいですね。確か、2曲目の反響もスゴかったと伺っ
たんですが。
よう:そうなんです。2曲目に投稿したスティービー・ワンダーの『I wish』に関しては、
1回目とは全く違った広まり方でしたね。投稿した3日後あたりから、海外からのコメント
や再生が劇的に増えたんです。
後でわかったんですが、YouTubeの公式ページが僕の歌を取り上げてくれたみたいで。
そこからイギリスのラジオやアメリカのテレビでも放映されて、更に広まっていきました。
YouTubeの公式ページに載るまでのアルゴリズムは解明できてないんですが・・・(笑)
社員:2曲目に関しても、再生回数は70万回。1、2曲と続いて大反響を得られましたが、
カバーする上で戦略などはあったのでしょうか。
よう:目標はグラミー賞受賞なので、「洋楽であること」は決めていました。マイケル・
ジャクソンに関しては、僕自身好きなのでカバーしたいと思いました。それと、僕より前
にマイケル・ジャクソンのアカペラを公開している外国の方がいたんですが、マイケルの
リズムの良さが全然表現されてなくて。
自分ならもっとうまく表現できるって思いもありました。
社員:2 曲目に関してはいかがでしょう。
よう:スティービー・ワンダーに関しては、ミュージシャンがよくカバーしたがる曲なの
で、音楽に携わっている人をターゲットにするためにカバーしました。ちなみに、3曲目
はオリジナルにすると決めていたんですが、あまりにも1、2曲目がヒットしたので、こ
こでオリジナルはどうなの?と思ってお蔵入りにしました(笑)
“世界を目指す”上で参考にしているのは、
“今、ノッている”マーケティング方法
社員:お話を伺っていて、かなり戦略的に動画を活用されている印象を持ったのですが、
ご自身で勉強されたんですか。
よう:大学時代にマーケティングを専攻していたので、その時に得たことはもちろん参考に
しています。あとは、過去の成功事例ではなく、「まさに今」成功しているミュージシャン
の手法をモデルにもしています。
社員:例えばどなたでしょう。
よう:例えばレディー・ガガですね。ミュージシャンとして大成功していますし、世界を相
手にしているという意味では参考にすべきなのかなと。YouTubeに関しては「LadyGaga
VEVO」という公式チャンネルを参考にしたり、SNSの投稿の種類やレイアウト、その他の
マーケティングに関しても参考にしています。
日本でヒットさせるなら、AKB48やEXILEの戦略を参考にすべきなんでしょうが、世界を考
えるならその時代に世界規模でうまくいっているマーケティングを参考にしないといけない
なと。
社員:レディー・ガガ以外に参考にしているものはありますか。
よう:YouTubeのアノテーションの入れ方なども、他の公式チャンネルを模していますね。
エド・シーランのチャンネルと配置を同じにしてみたり、ブルーノ・マーズのチャンネルと
同じく赤色で表示してみたり。
それから、僕は1分経過したら他のオススメ動画のリンクを表示しているんですが、これも
『VEVO』という音楽サイトが1分後だったので同じタイミングにしています。今YouTube
を席巻中ですからね。
これは自分のチャンネルでも使えるものは使わないとと思いました。成功事例においても、
過去ではなく“今”の事例を意識するようにしています。
メジャー音楽を軽視しない!
目標を達成するためには、やりたい事だけでなく
戦略的に動くことが大事
社員:今後の活動について教えていただけますか。
よう:あくまでも目標は「グラミー賞受賞」なので、アカペラにこだわらず、それに向けて
活動する予定です。具体的に4つ考えています。
- 1、EDM系のオリジナル曲を制作する
- 2、YouTubeにリリックビデオを作ってアップする
- 3、他のアーティストとコラボをする
- 4、自分の「キャラクター」を発信する
それぞれに関しても、僕なりに戦略を練っています。これは誰にも言ったことがなかったん
ですが・・・大丈夫だったかな(笑)
社員:では最後に、音楽作りについて気をつけていることがあったら教えてください。
よう:やっぱり「リズム」には拘っています。原曲をカバーする時は、テンポやリズムなど
は忠実に再現するようにしますね。普段何気なく音楽を聞いている時って、注意深くリズム
を意識しないと思うんです。
でも人間って、実は細かいリズムも無意識に認識にしていて。これを忠実に再現しないと、
聞いた時にモノ足り無さを感じたり、よく分からないけど何か違う・・・と思われてしまう
んです。
社員:他に気をつけている点はありますか。
よう:あとは「メジャーとは」をきちんと理解することでしょうか。音楽を長年やっている
と、ミュージシャンって、メジャーな音楽を軽視しがちになる気がするんです。
「あんなの本物の音楽じゃない」という風に。で、メジャー音楽がどんなものなのかどんど
ん分からなくなってくる。でも、たくさんの人を元気づけている、幸せにしているという意
味では、やっぱりメジャー音楽も素晴らしいんです。
そしてグラミー賞を取るには「その時代のメジャー」がなんなのか、人々が音楽になにを求
めているのか、正しく認識していることが大事かなと。曲調ももちろんですが、歌詞も、時
代が何を求めているのかをちゃんとみたり。
社員:とても興味深いお話をありがとうございました。
よう:ミュージシャン目線より、戦略的な部分が多くなってしまいました・・・
社員:大変面白かったです。こちらこそ、ありがとうございました!
————————-
プロフィール
よういんひょく(Inhyeok Yeo/여인혁)
すべてのパートを自分の声だけで演奏するアカペラ・シンガー。
1987年3月2日、韓国ソウル生まれ(国籍は韓国)。小学校の高学年を日本で過ごす。高校
在学中にはアメリカ、ニューヨーク州に留学。韓国の高校を卒業後、京都大学に入学。大学
を休学して2年間軍隊へ行ったことをきっかけに、音楽の道で生きていくことを決意。
目標は、韓国人初の「グラミー賞」を受賞すること。
・お問い合わせ:yeo-offer@scoop.co.jp