2004年11月にサービス開始となった動画共有サイト「Vimeo」。運営者であるジェイコブ・ロドウィック氏により考案されたそのサイト名“Vimeo”とは、“Video(ビデオ)”と“me(私の)”を掛け合わせたものです。つまりユーザー自身が作成した動画を共有するサービスというニュアンスのようです。ちなみにですが、文字を並べ替えれば“movie”という単語にもなります。
全世界で会員数が2500万人を超え、サービス開始から10年目となった2014年11月にはついに日本語にも完全対応。取り扱い通貨も拡大し、現在はドルだけでなく円やユーロにも対応となっています。Vimeoのデイ・メレンキャンプ社長は、「様々なクリエイターが活躍している日本は、当社にとって重要な地域である」とコメントし、日本でのサービス展開についても意欲的な姿勢を示しています。
そんなVimeoに投稿される動画の数々は、「YouTube」や「ニコニコ動画」などの日本にあるメジャーな動画共有サイトと比べ、全く違った雰囲気の作品が多数を占めています。
クリエイター達が手掛けるスタイリッシュな映像
いち早く高精細(HD)動画の受け入れを開始、そしてサポートしてきただけに、1日に平均で1万6000本以上も投稿されるVimeoの動画は全体的に高画質です。また、人気の投稿者のほとんどがアーティストやクリエイターなため、作品の雰囲気もやはり芸術性が感じられるものが多いです。
Colossus by Pat Vale
アーティストが繊細に街を描き上げていく様子を見ることができます。その手先の器用さは、まさにアートの職人。
The hidden life in pond water
こちらは顕微鏡でしか見ることができない世界を高精細映像で楽しめます。
THE AGE OF CURIOUS
フランスの映画際で受賞した作品です。海外のクリエイティブな動画が見れるのもVimeoの特徴ではないでしょうか。
Vimeoでは、クリエイター達が情熱をもとにきっちり手間を掛けて制作したクオリティの高い動画を気軽に楽しむことができます。せっかく時間をかけて楽しむのですから、やはり見応えのある作品のほうが視聴者側にとっては嬉しいことですよね。
厳選されたハイクオリティ動画“STAFF PICK”
Vimeoに投稿された動画のなかでも特にハイクオリティだと認められた場合、“STAFF PICK”のマークが付き、トップページにも掲載されます。Vimeoの動画の視聴者数は全世界で1億7000万人にものぼると言われていますから、もしそうなれば必然的に知名度も上がりそうですね。
そんなSTAFF PICKに選ばれた動画の一例としては、以下の様なものがあります。
Waterborne
なかなか緊迫感のある内容で、またストーリー性もあり、短編のホラー映画とも言える動画です。続きが見てみたいですね。
GRADES – KING
日本人クリエイターが制作した、実写とアニメを融合させたような面白い動画です。小さな女の子の元気なダンスも楽しいですね。
自らもクリエイターである運営スタッフもそれぞれが動画に対する情熱やこだわりを持っているからこそ、それに共鳴するように優秀なクリエイター達が集まり、日々クオリティの高い作品を目指し切磋琢磨しているのかも知れませんね。
それにしても、他のサイトでは様々なクオリティの動画が入り混じっている状況が見受けられますが、なぜVimeoでは投稿される動画の品質を保つことが出来ているのでしょうか?
品質の徹底管理に機能するVimeoの規約
誰でもすぐに投稿できる他サイトのような少し緩めの管理とは違い、Vimeoでは、動画のアップロード時に厳しいとも言える規約や制限を設け、徹底した品質管理を行っているようです。
アップロードできるのは自分で制作した動画のみ
これにはさらに「許可をもらった」というのは自身で作成したということにはならない、とも付け加えてあり、つまり何らかの形で作品制作に関わっている必要があるということを示唆しています。そしてさらに、動画の説明文に自分が担当した役割を記載しなければ削除対象になる、という意味合いの文章も。
“Vimeo Basic”や“Vimeo Plus”では
商用目的の動画はアップロード不可
広告が含まれる動画、販売を目的とするコンテンツ、商品のデモやチュートリアルも含め、営利企業やブランドを宣伝または表示する動画をアップロードする場合は”Vimeo PRO”を選択する必要があるようです。ただし例外として、独立系の制作会社やアーティスト、非営利団体の場合はこれに限らないとガイドラインに記載されています。
これらの規約に違反した場合、アカウントを削除されることもあるようです。ちなみにこの他にも、映画・音楽・テレビ番組など第三者に著作権のある素材のリッピングは禁止、憎悪表現・嫌がらせ・中傷・差別的発言が含まれる動画を禁止するといった項目もあります。
Vimeoというサイト名に込められたそのテーマゆえに、“本人が制作した(携わった)動画のみ”という点については特に厳しいようですね。しかしその規約があるからこそ、Vimeoにアップロードされる作品群は、独自性の高いクリエイティブなもので充実しているというのもまた事実なのかも知れません。
“Vimeo Pro”で動画の商用利用が可能
動画を鑑賞するだけなら登録は不要ですが、投稿をする場合は下記いずれかのプランで登録する必要があります。クリエイターとして収入を得たい、あるいは企業として動画を商用利用したいなら、Vimeo PROを使用する必要がありそうです。
◎Vimeo Basic 無料
・ストレージ容量 0.5GB/週
・動画変換のスピード:普通
◎Vimeo Plus 5995円/年
・ストレージ容量 5GB/週
・動画変換のスピード:優先
・メールサポート:4時間以内の対応
◎Vimeo PRO 19900円/年
・商用利用可能
・ストレージ容量 20GB/週
・動画変換のスピード:優先
・Vimeo上でオンデマンド販売が可能(※手数料:10%)
・メールサポート:1時間以内の対応
自身の作品をそのままVimeo上で販売でき、売上の90%を受け取れるVimeo Proのサービスは、クリエイターにとっては嬉しいシステムですよね。企業にとっても、クオリティーが高い作品を見たいと思っている視聴者に向けて動画を公開でき、商用利用できるVimeo PROは確度の高いマッチングが期待されます。
日本語にも対応し、日本でのサービスも本格化したVimeoは、スマホなどのモバイル端末でも利用できるVimeoアプリの効果もあり、今後さらに日本国内での認知度は向上していくはずです。
規約を徹底管理することで品質の高さを保ち世界を一歩リードするVimeoという土壌は、クリエイターとして、あるいは企業としてピュアなイメージを育てる上で最適な環境と言えるのではないでしょうか?
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